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●”三人寄れば文殊の知恵”


 「ホットカーラー」という名前はカタログに書く商品名が必要だというので、命名されたが、最初は当時流行していた「インスタント」からインスタント・カーラーという開発テーマだったように記憶している。

 テーマを始めるにあたって、僕には2名の助手が動員された。一人は新入社員だが大阪大学工学部出身の若手ホープN君。(その頃、国立3強から殆どM電工に入ってくる人はまれだった)もう一人も若手だが中卒で入社したのち仕事と二刀流で夜間高校を卒業したという、三人の中では特に技能経験豊富で心強いメンバーK君だった。

 インスタントカーラーを開発するには、先ず敵を知らねばならない。アミカーラーで髪にカールをつけるとはどういうことなのか。そして早くカールをつけるにはどうすれば良いか、などいろいろ調べた結果、カールの大きさに合った直径のローラーに髪を巻き、熱を与えると良いことがわかった。
でもどういう方法でローラーを熱くするか、勿論電線で電気をローラーに供給し、ヒーターで熱すれば良いのだが、それでは電源コードがローラーの数だけ必要になり、身動きが取れなくなってしまう。だから、ローラーはコードレスにして、しかもカールを付けるに十分な熱エネルギーを持っていなければならない。しかも温度は髪を傷めない60度以下に保たねばならない。

 最初に思いついたのは実験室にあった半田ゴテをつぶし、ヒーターを取り出して小さなアルミ缶の中に納め、テーブルタップのような専用スタンドに差しこんでヒーターを温め、
髪にアミカーラーを巻き、アミカーラーの横穴からこのアルミ缶を装着して余熱でカールをつけるというものであった。そこで毛束にアミカラーを巻き、熱したヒーターを差しこんでしばらく放置してから外すと何となくカールがつく。これはいけるというので、大中取り揃え、数も一人分セットできるほどの試作品をつくり初の実用テストを社内で行うことになった。

 出来映えを専門的に評価して頂く狙いも含めて、近くの千林で美容室を営む本職の美容師さんに会社に来ていただき、当時は数少なかった女子社員に協力を願って、社内の特別実験室で初のセット実験をにぎにぎしく、幹部立会いのもと挙行したのだが、結果は無残にもカール力不充分で、充分なカールを得るにはヒータ-を数回づつ再加熱しなければならなかった。
実験に協力してくれた女子社員は立会い美容師さんにドライヤーで格好良くセットしていただき、事無きを得た。

●”ハイテク”<凝固潜熱>でカール成功。 
 カーラーの熱量アップ作戦「第一弾」は”真夏の砂浜作戦”。

 これはヒーターとアルミボビンの隙間に砂をつめ、裸のアルミボビンでは指がやけどするので、表面にフロッキー加工を施し、これに髪を直接巻くというものであったが、数が多くなると頭頂部に漬物石を乗せたように重く首を支えるのがやっとという状態で、これではカールがついても商品にならないということがわかり、遂にこれも断念した。でもこの失敗から、ローラーは弾力性が重要と考えていたが、直巻き方式でも商品化できそうなことがわかった。今日でもホットカーラーはカーラーに髪を直巻きする方式を採用している。

 ローラーの軽量化と熱量最大化。この相反する要求を

満たす最初の解は阪大工学部卒のN君の熱力学理論から

導かれた凝固潜熱を利用することにより見事、解決された。

しかし、ステアリン酸などの高温になると溶けるこの種の

物質は極小さな隙間からも漏れ出す。これをプラスチック

ボビン(円筒筒体)に密封するには摩擦圧接などの加工

技術を開発する必要があり、後にアルミボビンに代わるの

だが、第一号カーラーは60度くらいで液状になったり

固体になったりするパラフィン系の材料をPP樹脂のロー

ラーに封入し、これを湯で温めて使う湿式ホットカーラーであった。

 カーラーの開発と並行して進めたカーラーを加熱する玉子茹で式の加熱器も完成し、金型投資を決心するまで丸二年間、今考えると当時の幹部は僕達を辛抱強く見守ってくれたのか、あきらめて放置していたのか。

でも、この経験こそ、われわれが次々と世界初商品を世に送り出す源泉になった。

これは間違いない事実である。(続く)

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